押印のはなし

普段の生活や仕事をしている際には、さまざまな書類に押印する機会が多いのではないかと思います。小学生のこどもでさえ一人で家にいるときに宅配便が届けば、ハンコを押して荷物を受け取ったりします。勤務先で管理職ともなれば、それがメインの仕事かと思われるくらい頻繁に押印することでしょう。

このように押印そのものには馴染みがあるものの、そのほとんどは「確認しました」あるいは「受け取りました」という意思表示をするものが大半のようですが、これとて深く考えて押印していないのが実情ではないでしょうか?

いわゆる『めくら判』のことですが、荷物の受取や社内で普通に回ってくる書類に押印すと際には、通常、それ程神経を使う必要はないのかもしれませんが、絶対安易にやってはいけない押印があります。それは、契約書を取り交わす場面でおこなう押印です。

 

本来、契約書はお互いの権利義務を明確にして、のちに起こりうるトラブルを未然に防ぐために作成するものですが、この契約書が本来の役割を果たすためには押印が必要とされいて、それが有効とされるためにはいくつかの要件があります。

 

 

署名と記名は違うものなのか

押印のはなしの前に、押印とともになされることの多い署名・記名の違いについて確認しておきたいと思います。

 

まず、『署名』とは、自筆によって自分の氏名を書くこと、いわゆる『サイン』のことを指します。一方、『記名』とは、『署名』のように自署する必要はなく、ワープロで打ったものやゴム印などを押したもの、また、他人に書いてもらったものも含まれます。

形式的な違いについては以上のようなことになろうかと思いますが、実際、法文などをみていると、「署名もしくは記名捺印」と書いてあるのをよくみかけます。

 

わざわざ法律がこのふたつを区別しているのはなぜか? それは、本人の署名があれば押印までは必要ないが記名されたものには押印が必要だということです。

ちなみに手形法82条には、「本法において署名とあるは記名捺印を含む」とあり、これを見る限りにおいては、まずは『署名』があって、その代わりとして『記名捺印』があるという位置づけであることがわかります。

 

以上は法律上の建前ですが、実際には署名したあとに押印することの方が多いはずです。やはり日本においては古くからの慣習として署名捺印が浸透しているのではないでしょうか。

 

契約書にはさまざまな押印がある

割印

契約書の枚数が二枚以上にわたることになったとき、それぞれが一体のものであることを示すために契約当事者全員が綴じ目にまたがって押印することをいいます。

 

消印

契約書には必要に応じて収入印紙が貼付されますが、この貼付された印紙と書面とにまたがって押印することをいいます。領収書などにも同じように消印されますが、契約書の場合には、契約当事者全員が消印します。

 

訂正印

契約書に記載の字句を訂正する場合には、該当箇所を二重線で消し、上部の余白に削除文字数と加入文字数を記載して押印します。押印は二重線を施した箇所ではなく、余白に削除○字、加入○字と記載した横に押印します。

 

捨印

捨印は上記の訂正印とは違い、あらかじめ上部の余白部分に契約当事者全員が押印してします。些細な訂正をするためのものですが、トラブル回避の面からも安易に捨印を使用することは避けるべきです。

 

止め印

文章や金額、数量の下に余白があるときに、その部分に書き込みをされないように押印することもあります。領収証の¥マークのようなものです。

 

確定日付印

他の印とはちがって契約当事者自らが押印するわけではないのですが、作成した契約書を公正証書とする場合には、公証役場にてこの確定日付印を押印してもらうことになります。確定日付印が押されると、この押された日付には「たしかにこの契約書が存在した」ことの証になるので、契約日自体が争われるようなときに効果を発揮します。