公正証書遺言の有効性が疑われた裁判

遺言の方式の中でも公正証書遺言は、法律の専門家である公証人によって実際に作成されるため、もっとも適法で確実なものとされています。

また、証人2人が立ち合うことも要求されているので、その信憑性は高いといえます。

しかし、このもっとも信頼性が高いといえる公正証書遺言が無効とされた裁判がありました。

 

 

遺言書作成時に意思能力はあったのか?なかったのか?

被相続人Aは死亡する前日、入院先の病院の病床において公正証書遺言を作成し、6人の相続人に対して遺産を配分しました。

病室には、証人2人の他、遺言執行者に指定されていた弁護士Bも立ち会っていたとのことでした。

遺言の草案自体はおよそ1週間前に書き上げられていたもので、公証人はAに対して遺言内容を読み聞かせたのですが、そのとき、すでにAの病状はかなり悪化していたため、うなずく程度であったとされています。

また、署名捺印することもできなかったことから、署名は公証人が代筆を行い、捺印は公証人が手を添えて押印したのですが、遺言の内容は、Aの長男Cの遺留分を侵害する内容であったことから、その後、裁判にまで発展することになったのです。

Aの死亡後、この公正証書遺言の有効性をめぐってCが、弟Dとのあいだでその有効性を争いました。

長男C側は、「亡くなる前日のAはほぼ昏睡状態にあって遺言内容を理解できる状況にはなかった。」、として無効を主張しました。

 

一方、弟D側の主張内容はこうです。

遺言執行人である弁護士Bは、Aが入院した翌日に早速病院に呼ばれ、Aから従前の遺言の書き換えを依頼され、これを受任しました。その際、Bが、その内容では長男Cの遺留分を侵害することになると説明したものの、Aはそれでよいとの考えを伝えたということでした。

また、公証人が病院まで出張して来て、病床にて遺言作成することも伝えてあったのだから、何ら問題はないと反論しました。

 

結果、一審判決では遺言内容に不備はなく、手続き的にも問題はないと認定されたものの、「遺言は無効である」とされました。

例え、手続きに問題がなく内容が遺言者の意思を反映していようとも、現実に公正証書遺言を作成しようとするとき、遺言者に遺言するだけの「意思能力」が必要であるとされました。