非接触事故を考える

「ぶつかってもいないのに、なんで過失があるんですか?」

自称目撃者の方はいいました。

 

 

接触したかどうかは問題ではない

ある住宅街の一角、Aさんは自宅ガレージに停めてあった大型バイクにさっそうとまたがり、意気揚々とツーリングへ出掛けたのでした。

自宅ガレージから大通りへ至るまでの区間は、ゆるい下り坂で道幅も狭く、住宅街特有の見通しの悪さもありました。自宅を出るとすぐに曲がり角が連続しているところがあって、いくつ目かを曲がると十数メートル先の次の曲がり角を曲がったばかりのゴミ収集車が低速で自車の方向へ向かってくるのが見えました。

丁度、Aさん側からだと進行方向を塞がれたように見えてしまったので、Aさんはあわてて急ブレーキをかけたのでした。

そして、Aさんは急ブレーキをかけると同時にとっさに左側へ車体を傾けたこともあり、バイクもろとも左側へ転倒することになってしましました。結果、バイクは下り坂を約7m滑ったのち、停車していたゴミ収集車の手前約1mのところで停止したのですが、Aさん自身はその途中で落車してしまい、路上に横たわっていたとのことです。

 

その後、ゴミ収集車の運転手が警察と救急車を呼んでくれたので、到着した救急車で病院へ搬送されることになりました。

 

ゴミ収集車運転手の方の言い分としては、「バイクは住宅街なのに結構スピードを出していたから急ブレーキをかけて勝手に転倒しただけです。自分は善意から警察と救急車を呼んだだけで、こんなことになるくらいなら放っておけば良かった。大体ぶつかってもないのだから自分は関係のない、ただの目撃者ではないかと思っています。」というものでした。

一方、Aさんは、「ゴミ収集車は曲がり角から急に出てきて前方の道路を塞いだので、衝突を避けるために急ブレーキをかけるしかなかった。相手車が進路妨害をしなければこんなことにはならなかったのだから、相手の過失の方が大きいと思います。」とのことでした。

 

ここでは保険会社が過失割合をどう判断したかは述べませんが、ゴミ収集車側にも過失ありとしたことは記載しておきます。また、警察もAさんが診断書を提出すれば人身事故として相手側を検察送致する予定であるとのことでした。

 

別の非接触事故の態様

実はAさんの事故が起きる数日前、同じ警察管内で別の非接触事故が起きていたのです。

簡単に事故の概略をいいますと、Uターンが禁止されていない交差点内でUターンをしようとしたB車に対向車C車が敏感に反応して急ブレーキをかけながら大きく左にハンドルを切って衝突を避けようとしました。

実際には、B車はUターンを開始したのではなく、軽く右へハンドルを切った状態で停止しただけだったので衝突は起こりませんでしたが、C車は驚いてブレーキとハンドル操作をしたのですが、実はこのC車の後ろをついていたバイクが、急ブレーキをかけたC車に驚いて転倒してしまい、その後、C車に追突したのでした。

 

B車の言い分は、「自車は停止しただけで、信号待ちから発進したばかりだったので速度も出ていたわけでもないし、C車が過剰に反応しただけだと思います。私は事故が起きるまでバイクがいたことも知りません。」というものでした。

 

Cさんとバイク運転手の言い分は省略しますが、この事故を処理した担当官に話を聞いたところ、「B車とバイクは非接触なので、B車を処分できない。あくまで、バイクがD車に追突した事故として処理しています。」というものでした。

実際に事故証明書を見ると、Bさんの名前はどこにもなく、Cさんとバイク運転手の方のみ記載されていました。

 

このケースでは、バイクがB車に驚いて転倒したわけではなく、D車の急ブレーキが原因で転倒したことからB車とバイクとのあいだには因果関係がないため、単なる追突事故として処理された事案です。

 

もし、B車の挙動に驚いたバイクが転倒した事故であれば、Bさんは人身事故の加害者とされていたと考えられます。

 

したがって、直接ぶつかっていないからといって転倒したバイクを見て見ぬ振りをして、怪我をした相手を救護しないでいると罰則を架せられることになるやも知れませんので、くれぐれもご注意ください。